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コードネームPON~ヤツはとんでもないものを盗んでいきました


育てにくい・懐かない・言うことを聞かないなどの前評判を受け入れて、里子犬に迎えたponte。意味は“架け橋”、ニックネームはポンちゃん。

元の飼い主さん宅では多頭飼いのうちの1匹でありながら、ほかのわんちゃんたちに馴染めず、孤立していたポンちゃん。

1匹1ケージで寝食していたと聞いていたから、今は亡き愛犬トトちゃんの骨壺や写真やお花がまつられている以外にはエサ時とトイレ時にしか使われていないわが家の犬専用の部屋、

通称「チビ部屋」のケージを当面のあいだ、ポンちゃんの住まいにしようと決めてケージの前扉を降ろし(ロックはせず)、部屋の前に、2重に柵を置いた。

いっぽう老犬3匹とわたしは、長年そうしてきたように寝室のベッドで眠った。朝4時過ぎにぴーちゃんがわたしの顔をつんつんと突き起こし、ぼやけた視界の端に「白と黒の子犬」の寝姿を見つけるまでは――。



里子犬ポンちゃんの大脱走


ええええええー!!! 

この13年わたしの右隣りはぴーちゃんの特等席だった。絶対に右隣り。寒くなったらわたしの頬を突いて「布団を持ち上げて」と無言の圧。

寝ぼけ眼で掛け布団を持ち上げるとそこに入り込み、ぬくぬくで眠る。熱くなったら抜け出して右上に置かれた枕の上で涼をとる。それがぴーちゃんのずっと変わらぬスリーピング・スタイル。

誰にも邪魔させないぴーちゃんのルール、絶対領域、暗黙の了解。
父犬のハム君もぴーの双子の姉・ブルーも(母犬トトちゃんも)13年の歴史の中で禁忌を侵すものは誰一匹としていなかった。それなのに――。

里親、里子犬を迎えた日09
 

ぴーちゃんはご立腹だったのか、悲しかったのか、「どうにかしてよ~」と泣きつきたかったのか。

いずれにせよ可愛くスネている彼女を抱き寄せて「だいじょうぶ、だいじょうぶぅぅ」とぼやけた意識でむにゃむにゃ言いながら全身をなでまわし、再び寝入った睡魔に勝てない飼い主。


――手首に巻いたApple Watchがあと10分で7時になることを報せて震える。今日のわたしは朝寝坊。ここのところずーっと頑張ってきたんだから今日くらいは自分にやさしく。

まずは朝の恒例行事。
目の端でぴーちゃんが枕の上で眠っているのを確かめ…いない。
右つま先をぴこぴこと動かして、ブルーの重みを感じとる…いない。
左腕を布団から抜いてハム君の後頭部をさが…

ん?! んんん?!
わたしの右脇のあいだになにかある…?
黒と白が見える…!!! え…ええええ?!!!

里子犬 二日目の朝




稀代の悪、その名はポン三世~盗みのプロ





ずきゅーん
ばっきゅーん
しゅばばばばっ

ハートが2度、射貫かれた音がして、心がまるごと盗まれた。

可愛いすぎるっ! ほんでもって愛しいっっ。

元の飼い主さんから「トイレマナーがまったく出来ていません、すみません…」と言われていたため、マナーベルトをして眠らせたはずなんだけどチビ部屋を抜け出してくる時にもがきにもがいて“脱皮”したのか、廊下の隅にぽろりと落ちていた。

かわいい…


この日以降、左腕にポンちゃんを抱えて寝室をあとにするのが、当面のあいだ朝のルーティンとなった。ベッドにうっかり粗相をされては半日作業の大騒動になる。


里子犬 二日目の朝 (5)


そういえば元の飼い主さんが何度か仰っていた。
「このコは本当はものすごく甘えたいのかもしれません。一匹で自分だけ、飼い主さんの愛情をひとり占めしたいのかもしれません」


no doubt!

奥様の予想通りだったみたいです! ――と写真と動画を添えてLINEを送ると、元飼い主の奥様は「まぁ! まぁ! まぁ!」とそれはそれは驚いておられた。



もう一度、4匹で食べる朝ごはん


服の首元から半身がはだけた「半裸」の状態の彼から、ひとまず服をはぎ取り――着せるにせよ脱がすにせよ歯をむき出して大暴れ――全匹のエサの用意に取り掛かる。

独占欲の強いブルーは、玄関でしずかに自分のペースで食べるから写真にはおさまっていないのだけど、チビ部屋にもう一度、「3皿」が並ぶ様を見られる日がくるなんて…と目頭が熱くなった。亡きトトちゃんが骨壺の中からよく見えるように並べてみたりして。

里子犬 二日目の朝 (6)


「…前足が長すぎて、お皿が低くて食べづらそう」
生前のトトちゃんを含めた4匹が、シニア世代~老犬に差し掛かった頃に見直したペッツルートのフリーフリー食器は使い勝手がよく、


そのままポンちゃんにも…と用意したのだけれど、こんなにも頭と首を下げて食べる姿勢がからだに良いわけがない。さっそく買いなおしだ…。新米飼い主あるあるだ…。




人に飼われていたけれど、人と共存していなかったポンちゃんにとって、人間との暮らしはこれが初めて。

人間との暮らしの中に在る物、暮らしの中で出る音、匂い…見るもの聞くものすべてが新しく、あらゆる物に不慣れでいちいちビクビクしている小さな白黒甘えん坊。

服を着せられてビクー! 
お皿を片付ける音にビクゥ! 
ハム君が横切るとビクッ!

里子犬 二日目の朝 (7)

それも次第におさまってきて、自らハム君の傍に近づいたり、膝の上に飛び乗ってきたり。

里子犬 二日目の朝 (2)
里子犬 二日目の朝 (1)
里子犬 二日目の朝 (3)
里子犬 二日目の朝 (4)


「正式に僕をこの家のコにしてください。僕、とってもいいコでしょう?」と、ポンちゃんが思っていたのかどうかは分からないけれど少なくとも今のところ彼はこの家のことも、この家の誰のことも嫌いにならずに済んでいるみたいだ。



トライアル1日目の深夜、カメラは見ていた【里子犬初日】


チビ部屋に設置している監視カメラに、チビ部屋を抜け出してくる前の“探検隊モード”のポンちゃんが映っていた。




小型の冷凍庫とはいっても、高さ50cmでそこまで低いわけじゃない。そこから頭ひとつぶん出ているところからもポンちゃんは手足の長い高身長のモデル体型といえよう。

この高身長と手足の長さと、やけに伸びのしなやかなボディがちょっとした騒動を次々と巻き起こすんだけどそれはまたいつかの機会に。

うーん、それにしても…可愛いやっちゃ…♡



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