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ponte(ポンテ/架け橋)と仮称をつけた生後10か月の犬の里親になるべく、仕事の調整をしたり体調を整えたり、

老犬3匹の歯周病・スケーリングの手術を行ったり、終生飼養の一環として飼い主自身の健康は重要課題と様々な検診を受けていた中でそれは見つかった――。





肌・皮膚の上を虫が這うような、むずむずゾワゾワした感覚


9月にノミ騒動が起ったものの、必死の思いで3週間で収束させた。動物病院で入念に調べてもらった結果、老犬3匹のからだからは「ノミの糞」すら見つからず、わたし自身が新規に噛まれることもなくなった。

ノミは完全に駆除・駆逐できたはずだった。
それなのにわたしのからだのあちらこちらに、「ぞわっ」とする違和感が発生した。
それはまるで
蟻が皮膚の上を這うような気持ち悪さ。

ノミに苦しんだ3週間が濃厚なトラウマとなって、「いるような」気がしているだけなんだろうか。
それとも本当はまだ「いる」のか。気が狂いそうだった。

けれど実際にはどこも噛まれておらず、赤く腫れてもいない。ノミ特有のぶり返す異常な痒みはどこにもなく、ただ、虫がからだを這うような気持ちの悪い感覚が、わたしの精神を蝕もうとしていた。

ノミの発生から通いだした皮膚科で相談をすると、先生は首を傾げた。
いくつかの皮膚や痒みに関する質問を投げかけられたのち、先生は言った。

「生理はきちんとありますか?」
「蟻走感が出る箇所は決まっていますか?」
「この数カ月のあいだに、ノミ以外でものすごくストレスや不安を感じたことはありますか?」
「――婦人科か内科に一度相談してごらんなさい」



蟻走感-ぎそうかん-肌の異常感覚


わたしのからだに起こっている、蟻がからだを這うような気持ちの悪い感覚は「蟻走感」というらしい。そのまんまの名がつけられている皮膚・肌の異常感覚。

これは更年期や、自律神経失調症の際なんかに見られる症状のようで、だから皮膚科の先生は「婦人科か内科へ」と仰ったのだろう。

更年期はまだまだ先のことだと思っていたけれど、早期更年期というものもあるようだし、婦人科健診はもともと受けるつもりで予約もしていた。とはいえ健診日はまだすこし先になる。

この体験したことのない気持ちの悪い蟻走感には、1日も早くさよならしたい。

車で15分のところに、信用できるレビューがいくつかついた“最新医療機器はないけれど、知識と経験は豊富そうな”婦人科を見つけた。



右卵巣の腫れと蟻走感の原因


蟻走感の原因を知り、蟻走感の苦しみから解放されたい一心で先生に訴える。

痒みの出る箇所はほとんど決まっています。
足首まわり、肩の裏、脇腹から背中にかけて、ゾワゾワとした嫌な痒みが走ります。

「最後の生理はいつでしたか? 生理は遅れていませんか?」
「このところ強いストレスを感じる出来事がありませんでしたか?」

皮膚科での問診と似た質問。
「血液検査をしますね。念のためにエコーで子宮も診ましょう」

右側の卵巣に“腫れ”が見つかった。

「――血液検査の結果を見てみないと断言はできないけれど、おそらく早期更年期ではないと思う。強いストレスがあったとのことだけど、その原因を聞いても大丈夫?」


「愛犬の死とノミ発生で四苦八苦しました」

7月からの3か月間に起きた出来事をかいつまんで話すと、『女帝』の雰囲気をまとい話しかけづらいオーラが全開だった先生はかけていた眼鏡を外して「1人ですごく闘っていたのね」と大きくゆっくり頷いた。

処方された薬は、わたしのリクエストの「漢方」と先生のご判断の2種類。いずれも子宮・卵巣に効くものではなく(血液検査の結果は後日だから)――よく眠れて、心に効くものだった。



「内科でもきちんと診ていただいてほしいけど、卵巣の腫れの原因も蟻走感の原因も自律神経失調症のような気がするわ。

 ほかのわんちゃんたちのため我慢したきたんだろうけれど、抱え込まずにもっとたくさん泣いてよかったのよ。でも、新しいコがきっとあなたにもう一度元気と芯からの笑顔をくれると思うわ」



ペットロスからの自律神経失調症~ノミ騒動がとどめを刺した~


後日出た血液検査の結果では異常は見つからず、また、卵巣の腫れもおさまっていた。

女帝先生から紹介をいただいた内科でも特に問題は見られず、先生曰く『がんばりやのわたし』はストレスを1人で抱え込んで、1人で闘って、疲弊しきってしまうのだそう。

そういえば喉に「ストレス球」が出来て苦しんだこともあるし、騒音でノイローゼになったこともある。騒音相談で向かった役所の窓口の方からも「闘わないでいいんです。逃げるが勝ちです」と説得されたな…。


里親になるため、新入犬・保護犬を迎えるための『環境』づくりとは?


ponteと仮称をつけて、すでに愛着を覚えていた子犬の里親になる気でいたわたし。




もしかすると子宮や卵巣に大きな病気が見つかるかもしれず、手術や入院をするかもしれず、あのコの飼い主になることを諦めなければならない――かもしれないことを、現在の飼い主さんに伝えるべきかどうかすごく悩んだ。

本当ならすぐに伝えるべきだ。でも、万が一「大丈夫」だったなら…話が二転三転し、振り回してしまうことにもなる。

今、言うべきか、言わざるべきか。
血液検査の結果が出るまで待つべきか。

悩みは尽きなかった。

わたしが手術をすることになったら、入院することになったら、3匹の老犬は誰にあずければいいんだろう。
新型コロナが原因でペットホテルもかかりつけの動物病院でも「あずかり」は無期限停止。

  • 身内は国内にいるけど、近くにはいない。
  • 親友たちはそれぞれ家族にトラブルを抱えていて、余裕がない。
  • 成犬ならまだしも、老犬を誰かにお任せするのは気が引ける。
  • 体調の急変などもしものことがあったら、その方が責任を感じてしまうだろうから申し訳ない。


終生飼養はあたりまえ。
終生飼養できる環境をつくるのは、わたし自身。



万が一に備えた環境をつくっていないのは、ほかならぬわたしだった。情けなさと不安で涙が出た。もう一度、生活基盤のすべてをこの機会に見直さなければ――。


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