2020年9月は「ノミ駆除・退治」で瞬く間に過ぎていった。
亡き愛犬がお空の上から仕向けていた?!
愛犬のトトちゃんが亡くなった7月、トトの夫でもある父犬のハム君の“うつ病”と娘犬ブルーの“右前足の滑り”に注意を払った8月。9月に入って早々に起こったノミ騒動とノミ退治・駆除に費やした3週間。
例年にないことが次々に起きている世界から見れば、ほんの些細な出来事にすぎないのだけれど――。
トトちゃんの新しいオシャレな「一生涯の住まい」が届いた9月末、さみしさは依然としてあるもののこれら一連の仕掛けは、トトの仕業じゃないかと今も疑っている。
わたしが悲しみに潰されないように、忙しくさせてくれたと疑っている。わたしがトトじゃなく「遺されたコたち」を向くように、「あのコたちだって同じように老いているんだから注意深く見なきゃだめだよ!」と、後悔に振り返ってばかりいた頭をぐいっと前に向けられたんじゃないかと疑っている。
そうしてひと区切りがついた頃、8月17日の朝に見た夢を思い出した。
里親を探している犬~亡くなった愛犬が見せた不思議な夢
そしてふと思い出した。8月17日の夢を。立派な黒毛和牛と、艶やかな黒い髪の日本人形の女の子が出てきた夢。「今じゃないよ、そのコじゃないよ。そのコは栗色でしょ? 縁があるのは黒い毛のコ!」
トトちゃんをの死を受けいれたくなくて、ペットロスなんて軽い言葉ではとうてい足りない喪失感にからだが引き裂かれそうで、死が身近で怖くなったわたしは「生」を感じる存在に触れたくなっていた。
遺された3匹は元気に生きているけれど、いずれも老犬ですっかりおとなしい。今にも破裂しそうな爆弾みたいに生を感じさせる存在を強く求めた日からひと月が過ぎて、バタバタしていた日常にひと段落がついた頃、「里親を探している犬」の話が舞い込んできた。
育てにくい・懐かない・指示を聞かない“ヤンキー子犬”
曰く、その犬はとても変わった、悪く言えば厄介ともいえる性格をしているらしい。人間界でいうところのごくごく一般的な優しいお家で生まれ育ったのになぜか1人だけグレちゃった異端児といったところか。
とはいえ決して飼い主さんご家族から冷遇されているわけでも見放されたわけでもなく、むしろあの手この手と試行錯誤を繰り返され、それでもどうにもそのコを満足させることができず、万策尽きて途方に暮れて相当悩まれているとのこと。
だから「里親を探している」というより、「このコに合った環境や飼い主さんを探した方がいいのではないかと悩まれている」という。
どのくらい変わった性格なのかをたずねると、出るわ出るわ面白エピソードの嵐。エピソードの数だけ飼い主さん家族のご苦労や試行錯誤がうかがえて、「保護が必要な犬」「可哀そうな犬」ではないということだけは分かった。
写真に写るそのコは、4本の足と眉間から頭頂部を通り首に向かって真っすぐに伸びる毛は白く、それ以外の毛は黒っぽい様子。
「縁があるのは黒い毛のコ!」
夢に出てきた黒毛和牛みたいに全身真っ黒ではなかったけれど、「会ってみればすぐに分かる」と思った。きっとこのコが有無を即座に決めるだろうと根拠のない確信を持った。
緊張なのか威嚇なのか、見せられた写真のすべてに映る「目」が血走ってバッキバキの小さな犬。ヤンキー犬。去年のトトちゃんの誕生日の3日後に産まれたギラついた目をしたそのコとの初対面は、1週間後と決めた。
悲しい夏が終わりを告げ、街のいたるところが“今年ばかりは場違いだよね…”と言いたげに申し訳なさそうにオレンジ色に色づき始めていた。