愛犬の月命日000



ひと月前の7月14日、わたしは生まれてはじめて愛犬の旅立ちのそばにいた。ペットロスを含んだそれらのことを書くのはトトちゃんの49日が過ぎてからと決めているので今日は割愛。

本日書きたいのは、初めての月命日は笑って過ごせたという記録。

食いしん坊だったトトちゃんが最期までむしゃぶりついたのは「手羽中」と「ピーマン」を煮たものと「経口補水液OS-1」だった。

OS-1にかんしてはわたしが数年前に室内熱中症になって病院に運ばれた経験から自分のため、愛犬のため、熱中症対策として念のために買っておいたもの。

それが“まさかのカタチ”で愛犬の生に寄り添ってくれることになるとは思いもしなかったけれど、彼女が息をひきとる間際まで口にした経口補水液OS-1をお供えし、

売り切れていた手羽中のかわりに買った「手羽元」「パプリカ」「えのき」「水菜」を茹でた特製朝ごはんをつくり、わたし以外の全匹で月命日をむかえた。

全匹がもう12歳~14歳の立派な老犬だから、歯もむかしほど強くない。けれど食い意地だけは張っているので食べやすいよう、むせないよう喉に詰まらせないよう手羽元にいくつもの切れ込みとさりげない“ほぐし”を入れて…

「マテ!」
「ヨシ!」

愛犬の月命日004

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センターポジションの末っ子犬ぴーちゃんは、なかなかの賢犬でちゃっかりした性格。好きなものは最後に派。

粗熱を冷ますためですよ~

といった風をよそおって手羽元をひとまず「外へ」出し、天然の鶏の出汁のきいたスープとお野菜を堪能。両サイドの2匹、奥の父犬と手前のブルーは

がっがっがっ…
ふがふがふー
ぐぐぐ…ぐ…ぐふー

と音を立てて激しくがっついている。胸の中で「相変わらずみんな元気よ」と、わたしにはとうてい見えっこない透明な姿で同じようにがっついているであろう彼女に話しかけた。




犬たち専用の「チビ部屋」の向かいのキッチンに戻り、シンクにもたれかがりながら咀嚼音やがふがふぐふぐふと荒い鼻息を聞いていると

自分の顔くらい大きな、粗熱のとれた手羽元(笑)をくわえて寝室へと向かうぴーちゃんが横切った。

大好きな手羽元だから誰にも邪魔されず安全な場所で、手羽を独占して(?)じっくりと味わいたいのだろう。ぴーちゃんらしい。だがしかし、その寝室は飼い主であるわたしのものだ!――とっくに犬たちの寝室にもなってしまっているけれど――シーツやブランケットをベッタベタのコッテコテにされるのは困る・オブ・困る。

「こらー!」

と叱ったら手羽を落として寝室に逃げて行った。♩すたこらっさっさー と効果音が入りそうなほど慌てる様がおもしろい。

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けれど、廊下に落としたままの手羽元のゆくえは人一倍…犬八倍気になって仕方がなく、そーっと確認。

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姉犬のブルーが自分の手羽元に興味を持ってくんくんしている。

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「いいんですか!?」
「許されるんですか!?」
「ワタシのですよ!」
「粗熱とったのに!!!」

とでも言いたげな切ない目線が愛し可愛く、笑ってしまう。

飼い主にかなしみの底を見せるのも愛犬なら、飼い主をそこから救いあげ、再びおだやかな日常を過ごさせてくれるのも愛犬なんだな。やっぱり彼ら彼女らとわたしは“かけがえのないバディ”なんだな。

そう思ったら、このひと月、凍えたように冷めたくなっていた手先(手羽先ではない)にぽおっと熱が通った。

月命日はさみしくなる日だと覚悟していた。
2日前から不安がつきまとっていたし心細かった。

けれどそんなのは杞憂だった。月命日は生と死をほんのひとたび繋いでくれる、優しくてあたたかい日だった。

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