外科手術はうけないけれど、薬に頼った対症療法だけでは心もとない。気管虚脱グレード4で手術をせずに症状が緩和した犬が実際にいると知った今、
飼い主のわたしができることは生活環境の徹底的な見直しだ! と涙を拭いて動き出すと、あら不思議。本当に咳が止まってきた――。
気管虚脱のチワワに処方された[ベトルファール]
ベトルファールは、非麻薬性オピオイド鎮痛薬のなかのひとつで、ぴーちゃんは鎮痛目的の注射薬としてではなく、飲みやすいようにシロップと併せていただき口腔内注入の経口投与として使用する。
余談ですが、ベトルファールではなくブトルファールと呼ばれたり記載されていることもある。
<14歳の老犬/1.9kgのチワワのぴーちゃんの使用例>
ぴーちゃんの適量を見つけるために、まずは数日間のお試し投与という大前提。一般の経口薬(飲み薬)のように朝・夕の食事前といった飲み方ではなく、咳が止まらない時や酷い時に処方する。
- 原則1回1滴
- 2滴になると“ふらつく”副作用が見られることも ※麻酔薬
- 1滴で効果が見られない場合のみ2滴にして、注意深く様子を見る
- 1日に多くて3回まで投与して良い(上記のとおり、1回1滴から2滴)、その間は必ず8時間空ける
強力な作用を持つオピオイド鎮痛薬は
「麻薬」に指定されているため、
麻薬施用者免許を取得した獣医師のいる動物病院で
獣医師の判断・指示を適切にうけてください。
気管虚脱グレード2の犬、ベトルファールを初投与
- [注1]餌やオヤツに混ぜたり、飲み水に混ぜたりする使用は基本NG。※よほどの時は自己判断せず獣医師に相談を!
- [注2]直接早く確実に気管に効かせるために、口腔内に「ちょんっ」と1滴垂らす使用法を伝えられたものの、案外これが難しい。
嫌がって動く犬の口元やからだを優しく、でも的確に押さえて「ちょんっと1滴」がこんなにも難しいとは!!!
↑このごく少量で2300円もするベトルファールの投与は、飼い主も緊張と慎重で身体がかたくなる。それを察知しているのぴーちゃんもさらに強張る。
「動かないで、動かないで」
ジタバタ!
「動かないでってば! うごかな……ああああっ!!! 2300円の一部がわたしの、わたしの手にぃぃぃ!!!」
ダッ……!(逃亡)
ケホッ…ケホッ……!(逃亡先で咳)
「こらああああ!!! いったい誰のためにぃぃ!!!」
ケホン……!
「動くな! 動かない! あああっ、2滴ぃぃぃ!!!」
ダッ……!(逃亡)
「なんでよ!!!」
↓
↓
ベトルファール暴れる初投与から10分後の効果
10分後――ベッドの上に『コロンっ』と倒れ込んだかと思うと、その後9時間1度も起きてこず。もちろん咳もなく。
飼い主は心配で何度も見に行き、ティッシュペーパーを彼女の顔の前に垂らし、呼吸の有無を確かめることとなった。
麻酔薬の威力……ッ!!!
しかもたぶん、2滴……ッ!!!
気管虚脱グレード2と診断をうけた14歳の老犬、愛しいぴーちゃんの気管虚脱5日目ベトルファールの投与初日はこんな風にして過ぎた。
薬の効きがあまりによくて(だって2滴……)起きてこないぴーちゃんを心配して、末っ子のポンちゃんは何度もガムをお見舞いに届けてる。
戻しても戻してもふと気づくとベッドの上にガムがのっているので、わたしの気づかぬうちに何度もお見舞いをしている様子。
戻しても戻してもふと気づくとベッドの上にガムがのっているので、わたしの気づかぬうちに何度もお見舞いをしている様子。
暴れん坊で食いしん坊で聞かん坊の末っ子ポンちゃんだけど、ぴーちゃんのことだけは心から慕っているようで、彼女が手術後や病気で安静を強いられている期間は何度もぴったりと傍に寄り添い、
- 6日目は投与1回。なぞに興奮して走りまわっていたので、それを止めるべく追いかけると「遊んでくれてる~♩」とさらに大興奮 → 咳が止まらず → ベトルファール1滴 → 爆睡
- 7日目はベトルファールの投与なし。PM2.5が強かったのでダンプロンシロップの投与のみ。
動物病院の先生からも「ぴーちゃんは化学物質過敏症も持っているので、ダンプロンとベトルファールそれぞれをうまく使い分けていきましょう」と言われているので、化学物質過敏症からきている咳か気管虚脱からきている咳かを注意深く聞分けるようしています。
さて次回は、前回の[気管虚脱グレード2の犬と生活の見直し[1日目~4日目]の中で書きました――
気管虚脱ステージ2の老犬ぴーちゃんにとっての最適な温度と湿度を保っても、咳が出やすい部屋と咳がほとんど出ない部屋がありました。咳がほとんど出ないのは、安全地帯である寝室の「ベッドの上」。それ以外の部屋だと以前のように酷い咳・連続する苦しそうな咳ではないにせよ、ケホケホと軽い咳が続くことがあります。ベッドの上とそれ以外の部屋、室温も湿度も同じようにしているのになぜだろうと不思議に思うも、答えはあっさりと出てきました。◉ベッドの上は「床から50cm」◉それ以外の部屋で彼女が滞在するのは、ほぼ床~+3cm程度。この差による咳の出方の違い――室温・湿度は各部屋同等――は、動物病院の先生が思わずメモをとる、ほんの些細な、でも気管虚脱の犬にとっては大きな発見だったのです。
――上記についてまとめたいと思います。