気管虚脱グレード2の犬と生活の見直し (2)


外科手術をしなければ治ることはない、と多くのネット情報でその怖さが書かれてある「気管虚脱」のグレード2を、14歳の老犬ちわわ・ぴーちゃんが患ってしまった。

『化学物質過敏症』との付き合いにもようやく慣れてきたばかりだというのに、またしても呼吸に苦痛を伴う病気。どうして神様はこのコばかり選ぶんだろう。

オス・メス・メスの3匹で生まれたぴーちゃんは、熱望されてよそのお家の子になった「ジャンボ」と、今もともに暮らす「ブルー」の赤ちゃんパワーに押しやられて、上手く母乳にありつけなかった。


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気管虚脱グレード2の犬と生活の見直し (6)


離乳食がはじまるまで2時間ごとに起きてシリンジでミルクを与えて育てた。文字通り、わたし(と元夫)が母となりいちから育てた。

だから、ぴーちゃんはわたしにとっては、飼い犬というより「娘」のような特別な存在。彼女もそれをわかっているのか、とても育てやすく手を焼いたことが一度もなかった。

そんな彼女が「外科手術をしなければ、気管が潰れて呼吸困難に陥る死に向かっていくだけの病気」とされる気管虚脱グレード2になった。ぴーちゃんの気管の一部はもうすでに50%も潰れている。

外科手術はしないと決めた。
だけど、わたしにできる最善は尽くすとも決めた。

気管虚脱のグレード2以上で手術をうけずに「助かった犬の例」が一例でもあったなら……絹の糸よりも細い望みをかけて祈るように検索をかけると、案外あっさり見つかった。







気管虚脱と生活の工夫~助かるかもしれない?!



気管虚脱の重症度がかなり高いため、手術になる可能性がある事もお話ししましたが、内科療法、ダイエット、飲水器の変更などを始めたところ、症状がしっかりと緩和してくれたため今回は無事手術にならずに済みました!

気管虚脱の子は、生活の工夫もとても大切で、飲み薬と同じくらい重要なポイントです。

あれ?
助かるの?

よし! そうと可能性があるのなら、やることはひとつ。

麻酔薬「オピオイド」の試投薬がはじまるまで4日もあるんだから、生活環境を『ゼロ』から見直そう。化学物質過敏症の緩和の為に実行しているあれやこれやも含めて『ゼロ』から!



生活環境の見直し1日目~診察を受けた当日夜



  • 寒かろうと就寝時につけていたエアコンの暖房――飼い主の在宅時はガスファンヒーターを使用――をOFFにする。
  • 加湿器はこれまで通り『自動・中』で朝までON。
  • ケージの中や犬用テントの中は、ブランケットのほかに電気毛布や電気マットを『中』にしてON。
  • 新しく購入した電気ストーブはケージに向けてON。
  • 窓から伝わる外気で室温がさがるのを避けるべく、新しく購入した『明和グラビア MEIWA 断熱カーテンライナー 採光タイプ』を各部屋に設置。
  • 上記の状態で2時間を過ごし、室内の温度や湿度の推移を記録したのち深夜1時頃「リビングの温度19度、湿度62」で就寝。

翌朝7時半までぴーちゃんの咳は聞こえず。モニターカメラで確認するも咳はない。彼女自身や他の3匹が起床し動き出すと「連続する咳」が出はじめる。


生活環境の見直し2日目朝



ぴーちゃんの弱くなった視力や、14歳の足腰を考えて少し前から使用をNGにした寝室の人間用ベッドへの昇降を再び解禁することに。※飼い主がベッドに入ると、彼女はベッドを降りてリビングのケージの中で眠る。

すると、それまでの咳込みが嘘のようにぴたりと止まりました。
「寝姿勢」が楽なのか、子犬の頃から人間用ベッドで寝ていたこともあり精神的に落ちつくのか。それとも化学物質過敏症の緩和のために用意するようにと医師から言われた『安全地帯』は、気管虚脱にも有効なのだろうか?

これはアレルギー科の先生から是非ともとお勧めされたことであり、アドバイスを素直に聞き入れてよかった! と思っていることでもあるのですが

ハウスダスト・アレルギーや、化学物質過敏症に苦しんでいる、苦しむ家族がいる場合、可能であれば『安全地帯』をひと部屋つくっておくと救いになります。

わが家の場合それは「寝室」です。



結局その日(2日目)は深夜2時まで、寝室には加湿器もつけず電気ストーブもつけず、もちろんエアコンもつけず、電気毛布のみ(掛け布団やブランケットがあるためふかふかぬくぬく)

暑くなると電気毛布のない箇所へ、寒くなると電気毛布のある場所へ移動したりお布団へもぐったり自由にコロコロと動く様子をモニターカメラで随時確認。

時々、「ケホン……」と聞こえることもあったけれど、2日前までの咳の量とは比べものにならないほど。あまりにも静かで咳が聞こえないため、震える手で何度も彼女を揺さぶったくらいです。

「生きてる……よね?」
「ケホン……!」

気管虚脱グレード2の犬と生活の見直し (4)


生活環境の見直し3日目・4日目~ヒントは「高低差!」



気管虚脱に「高温多湿」は絶対NGと書かれてある記事をいくつも見ました。高温に関しては個体差があるのであくまでも、ぴーちゃんに限定すると

リビングでの就寝時
  • エアコン暖房……OFF
  • 電気毛布……ON
  • 加湿器……「自動の弱」ON ※下記参照
  • 電気ストーブ……ON


室温は「16~19度」、湿度は「57~62%」がもっとも苦しくなく、引っかかりなく呼吸をしやすいようでした。

ただし、本当は彼女にとっての安全地帯である寝室の環境がもっとも――気管虚脱的にも化学物質過敏症的にも――最適のようで、下記の設定で――飼い主が心配になるほど――咳ひとつ聞こえないようになりました。

気管虚脱の愛犬に使ってよかったもの、咳を悪化させたもの


寝室の環境
  • 電気毛布……ON  (人間のために敷布団の上)+(ぴーちゃんのために掛け布団の上にミニサイズの電気毛布を、ブランケットとともに設置)いずれも温度は[中]設定
  • 加湿器……無し
  • 電気ストーブ……基本OFF【注】室温が15度以下になるとON
  • エアコン暖房……無し

上記の場合、室温は平均「16.1~18度」。湿度は「55~6%」。廊下を挟んで浴室・洗面所の向かいに寝室があるせいか、湿度は思ったより低くなく高すぎもせず。洗濯時や洗濯直後・飼い主の入浴後などは湿度が70%くらいまで上がるせいか、やはり強く咳が出ます。

気管虚脱に高温多湿がNGというのは――適温や適した湿度は個体差による――信用度の高い情報と言えると感じました。


咳がでやすい部屋・咳がほとんど出ない部屋

気管虚脱グレード2の犬と生活の見直し



けれどここで疑問が生じました。
気管虚脱ステージ2の老犬ぴーちゃんにとっての最適な温度と湿度を保っても、咳が出やすい部屋と咳がほとんど出ない部屋がありました。

咳がほとんど出ないのは、安全地帯である寝室の「ベッドの上」。それ以外の部屋だと以前のように酷い咳・連続する苦しそうな咳ではないにせよ、ケホケホと軽い咳が続くことがあります。

ベッドの上とそれ以外の部屋、室温も湿度も同じようにしているのになぜだろうと不思議に思うも、答えはあっさりと出てきました。

◉ベッドの上は「床から50cm」
◉それ以外の部屋で彼女が滞在するのは、ほぼ床~+3cm程度。

この差による咳の出方の違い――室温・湿度は各部屋同等――は、動物病院の先生が思わずメモをとる、ほんの些細な、でも気管虚脱の犬にとっては大きな発見だったのです。


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