だから、というのも勿論あるのだろうけれど、わたし自身もその男性に違和感を覚えていた。
約2週間後にクリーニングを終えたファンヒーターを持参する担当を、別の人でお願いしようかどうか迷っているうちに時間は経過して「明日がその日」になってしまった――。
立っていられないほどの眩暈(めまい)
愛犬のブルーが唸り、わたしが違和感を覚えるガス点検員の男性は翌日わが家にやってくるという。ガスファンヒーターは返してほしいけれど、「あいつが来る」のはとても憂鬱。
気持ちはそのまま表情に出ていたようで、そばにいた2人の仕事仲間から「今の電話、嫌な相手だったの?」とたずねられた。
結局、彼ら2人が明日わが家で待機してくれるというので遠慮なく甘えることにした。ガス点検員の男性が来る1時間前に2人は到着し、気のせいか神経の尖った様子のブルーと他3匹をかまってくれていた。
約束の時間の15分前だったと思う。頭の中で脳がぐらぐらと大回りするような眩暈に襲われた。“地震の揺れ”だと勘違いしてしまったほど。
クリーニング代金を友人に預け、ガスファンヒーターの引き取りも代替機の返却も彼らに任せた。時間にすると10分とかからなかったと思う。
「帰ったよ」――ほっとした。
「でも、料金は受けとらなかった」――なんで?
「後日また連絡します、だって。押しつけたんだけどね、お金」――



なにかに護られてはいる~有難い邪魔の防波堤
ガス点検員の男性からその後、何度か電話があった。ガスファンヒーターのクリーニング料金のお受け取りにうかがいます、と。けれどそのたびにわたしにとっては“有難い邪魔”が入った。
「渋滞に巻き込まれていて遅れそうです」
「子どもが熱を出したらしく、幼稚園にお迎えに」
「寝坊をしてしまいました」
などそのすべてがガス点検員の男性都合による“有難い邪魔”。きっと偶然なんだろう。でも、なにかに護られているような気もする。
間もなく年が明けようとしていた。お金の件を来年に持ち越すのは嫌だからという建前で、ガスのサービスショップに連絡を入れた。
電話受付の女性が話しやすかったこともあって、これまでのすべて話したところ――ちょっとした騒動になった。
とても満足のいく申し訳ないほど丁寧な謝罪があって、好・青・年のお手本のような男性がわが家の新しい担当になった。
吠えることも鳴くことも唸ることもしなくなった老犬ブルーには、気の早いお年玉(犬用馬肉カップケーキ)をこっそりプレゼント。
「あの人はやっぱり、ちょっと問題のある人だったみたい。ありがとね、おまえのおかげよ」
残すところ数日となった2021年は、焦げたにおいのしない暖かな空気とともに穏やかに過ぎようとしていた。
違和感と中吉のおみくじ
「違和感」って第六感だと聞いたことがある。
違和感を「気のせい」と流すことなく素直に受けいれ適切に対処することが、トラブルに巻き込まれずに済む処世術のひとつだと聞いたこともある。
2022年元旦――氏神様の神社でひいたおみくじは「中吉」。けれどそこに書かれた神様からのメッセージは不吉な予感をかんじさせるものだった。
中吉。思いもかけぬ煩い起こりて心痛するが、心正しく身を慎めば末永く音信のたえし縁者又は他人の便ありて、喜び事が出て来ます何事も運に任せ思い煩うな。
嫌な予感がするな……。
またなにかあるのかな……。
違和感でざわざわする……。
- 正月明け早々1月2日、お昼の13時半頃。犬の散歩中に不審者に狙われて見知らぬおじいさんに助けていただく。
- ショックから一時的に左目が見えなくなって、精密検査を2つの病院でうけた。
- 1月23日あたりからようやく視界がクリアに戻ってきたけれど、ヘアメイクの仕事には支障がでまくるため、1月いっぱいは仕事を休んでいる。
- 例のガス点検員の男性から、お葉書が数通、届いていたこと。
世の中には同じ内容のおみくじを引き、その意味を問うてる人が自分以外にもいるんですね。なんだかちょっと安心しました。
ああ、もう誰からも狙われない1年になりますように!!!
リンク