
今では4匹いないとバランスが悪く感じるし、誰かがいないなんて考えられもしないけれど、それでもふた月に1度は「多いな」とひとりごちてしまう。
チワワのパピーを溺愛しすぎる
2006年夏、ハム君(現在15歳オス)をブリーダーさんから譲っていただいた。あまりの可愛さに当時の彼――のちに夫、のちに元夫――と溺愛してしまった。
生まれる前から大型犬2匹と暮らしている愛犬家の両親のもと育った彼は初めての小型犬に目じりを下げっぱなし。
初めて犬を飼うわたしはわたしで、小さくてまんまるとコロコロとしたパピー特有の愛らしい姿に「目の中に入れても痛くないって、このことか」と体感した。そうして"抱き癖"のついたハム君は、分離不安症になってしまった。
チワワのパピーが分離不安症になる


分離不安とは――犬が家族(または家族の特定の人間)と離れたときに、不安や恐怖によって平常を保てなくなってしまう状態です。「分離不安症」、「分離不安障害」などと呼ばれます。分離不安のパニック状態が原因で、こんな行動を起こすことがあります。①排泄の失敗。過剰な排泄。②吠え続ける。遠吠えをする。③家具などの破壊行動。④手や足をなめ壊す、尾をかじるなどの自傷行為。⑤飼い主さんがいない状況だけでの食糞。⑥留守番をさせられる場所から逃げようとする(部屋、サークル、クレート、車の中など)。⑦一定の場所を一定のリズムでウロウロ歩き回る。⑧飼い主さんの留守中は食べないなど、食欲低下。⑨下痢、嘔吐など体調の不良。
当時のハム君のケースは②に近く、吠え続けることはなかったけれど「どこかでサイレンが鳴ってるな」と勘違いしてしまうよな
ウーーーーーーーーーーーーー!
という一本調子の遠吠えを息が続くまで。はじめはそれが遠吠えとは思わず、ガス警報機が鳴っているのだと思い、家じゅうの窓をあけて換気をした。
どうやらガス漏れではないらしい、どこかでサイレンが鳴ってるんだな大変そうだな。と胸を撫でたら事件現場はわが家の愛犬ハム君だったという。
どうやらガス漏れではないらしい、どこかでサイレンが鳴ってるんだな大変そうだな。と胸を撫でたら事件現場はわが家の愛犬ハム君だったという。
チワワの仔犬を長時間留守番させない
分離不安の解消のためにわりと早めにドッグトレーナーに習いうけ、愛情と責任を持って必要な躾を徹底したおかげで、警報機もサイレンもひと月と経たず鳴りやんだ。
けれどハム君は"幸運をもたらす犬"だったようで、彼を飼い始めてから彼もわたしも仕事が上昇気流に乗り出した。会社員の彼は花形部署への移動と昇進、当時新人のエディターだったわたしもにわかに忙しくなった。
とはいえまだまだ子犬のハム君に何時間も留守番をさせるわけにはいかない。ブリーダーさんからもそのことについては口酸っぱく言われて納得のうえで譲り受けた。
「お家も近いしハム君にとってうちは実家みたいなものだから、いつでもお預かりますよ」
ブリーダーさんとはいい関係を築けていたこともあり、ありがたくその言葉を真に受けて相談してみることにした。快諾いただき、4時間以上家を留守にする時はハム君は"実家預かり"になった。
チワワの仔犬の運命の赤い糸

兄弟や姉妹・従兄妹たち――全員犬です――がいるおかげかまったくもって寂しそうなそぶりを見せないハム君。彼はブリーダーさんがよそから譲り受けたばかりだという、"美少女犬"と仲睦まじくなった。
それはまさに、のちにハム君の最愛の妻となる「トトちゃん」との出会いであった。2匹はどうやら運命の糸で繋がれていたようで、わたしたちがハム君を迎えに行き、離れ離れになると互いに分離不安の症状が出てしまった。
そんなこんなで正式にトトちゃんを家族として迎えた。彼女もまた"幸運をもたらす犬"だったらしい。
信じられないほどタイミングよく、彼の実家とブリーダーさん宅のちょうど真ん中に理想のお家が見つかり、彼とわたしは結婚を視野に入れて愛犬2匹とともに一軒家に引っ越すことにした。
この時は、2人と2匹の暮らしをはじめるつもりだった。まさか2人と2匹から3匹生まれて2匹を手元に残すことになろうとは予想だにしていなかった――。