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里子犬・保護犬の『癖』の理由


30年以上もの長きにわたる多頭飼い家庭で生まれたポンちゃんは、自分の父犬・母犬ともうまくいかず、兄弟犬たちともうまくいかず、元の飼い主ご家族をとても悩ませていたという。

ポンちゃんによかれと様々な手段で家族になじむよう試行錯誤を繰り返してみたもののいずれも彼には効果がなく、どうやらポンちゃんは「1匹で、愛情をひとり占めできる環境で飼われたいのではないか」という結論にいたり、その方がポンちゃんにとって幸せなのであれば――と、里親募集に至ったのだそう。

とはいえ元の飼い主さんご家族も、手間のかかるコほど可愛いのとおり、積極的に里親募集をなさっていたわけではなかった。

「このコのためにもいい飼い主さんがもしもいたら…もしも…」くらいのものだったそう。だから里親募集も3回取り下げたほどなんだとか。

わたし以外は誰一人として里親に名乗りを上げず、問題児ポンちゃんとわたしのお見合い“そのものは”トントン拍子にすすんだのだけど、そのことは過去にも書いたのでここでは詳細は省きます。








グルグルくるくると回り続ける子犬の理由


彼がうちのコになる前、元の飼い主さんは「わけがわからないんだけども~」と前置きをして話し始めた。

「このコはずっとグルグル回るんです。うちに来客があってケージを覗かれると、吠えながらグルグルくるくるとずっと回ってるんです…」
「家族が1階に下りてくると吠えながらグルグルグルグル…いったいなにがしたいんだか~とにかく変わったコなんです。くるくるするのやめなさい! って言っても一向に止めないからもう諦めましたけども…」


――ポンちゃんの里親になって今月で9ヶ月になる。わたしは元の飼い主さんが仰ったこの話をふとした拍子に何度も思い出す。そのたびに胸がきゅっと痛む。
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彼の新しい飼い主になって、毎日彼を観察して、彼がなにを求めてなにを嫌がり、なにを楽しみになにを怖がるのかを飽きることなく観察していると見えてきた。

彼は、嬉しい時・楽しみな時・褒めてほしい時・(嬉しくて楽しくて)興奮している時にグルグルと回る。大好きな飼い主さんが気付いてくれるまで、褒めてくれるまで、ずっとずっとくるくると回り続ける。

ポンちゃんは前の飼い主さん家族のことを、ちゃんと好きでいた。お家に遊びに来られたお客様をおもてなしする気持ちで、嬉しくて、撫でてほしくて可愛がってもらいたくて、ずっとずうっと回っていた、たぶん、きっと――。

い主がエサの準備をはじめると嬉しくて覗きにきたり、どや顔で見にきたりグルグルが止まらない


はじめて見る・嗅ぐ・聞く『たこ焼き』に好奇心とグルグルが止まらないポンちゃん

犬とタコ焼き 大興奮 (1)
犬とタコ焼き 大興奮 (2)
犬とタコ焼き 大興奮 (3)




子犬の少々ヘンな癖『検閲』と『3度の対面』


ポンちゃんの癖はもうひとつあった。これは元の飼い主さんも気づいていなかった、ちょっぴり変わった癖。

人に対しても物に対しても何に対しても「3回体験/3回の顔合わせ」をしないと心を許さない癖。たとえばそれは、飼い主である私がスーパーで買い物を終えて帰宅した場合にも――。

商品の入った買い物バッグからすぐさま取り出し、冷蔵庫へ入れる…のはポンちゃん的には×。飼い主的にも×。なぜならその後のポンちゃんは冷蔵庫の前から3時間でも5時間でも動かないため。
入国審査&犬

出入国管理『イミグレーション・ポン』を通り、顔合わせ――におい確認や歯ごたえ確認も含む――を済ませてからでなければ、忠犬ハチ公ならぬポン公はずっと『俺というイミグレ』を通るのを待ち続ける。

そのため、冷蔵庫に仕舞った品を再び出して…という面倒くさすぎることをしなくてはならない。よって買い物から帰ってきたら、冷蔵庫前でバッグからすべてを取り出して並べる。ポン公が一品一品に対して「目視」→「クンクンポリス」→「噛み噛み検査官」→「グルグル回る ※満足している」の流れを踏んだ品から冷蔵庫に仕舞っていく。

『イミグレーション・ポン』はじめて見るお米容器を執拗にチェック

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うちのコになって9ヶ月になる今では、たいていの品に「見覚え・嗅ぎ覚え・噛み覚え」があるので、検閲は非常にゆるめ。たいていの場合、3回見て・3回嗅いで・3回噛めば「その品に関してはOK!」となる。
クリミナル・マインド FBI行動分析課&犬

もちろん未だに、これまでに見たことのない商品を飼い主が買ってくるとイミグレ・ポンはテロリストを炙り出すFBIかのごとく、鋭くチェック。

楽天やAmazon、ZOZOTOWNから商品が届いた時なんかには、私が箱を開梱するまでやっぱりその場から離れない。入国審査官ポンは新商品にはとくに厳しい。



井戸端会議に参加し、リハビリ歩行のおじいさんについて歩く


もちろんこれは「対人」や「対道路」「対車」「対バイク」「対音」に対しても同様で…ポンちゃんは、道で立ち話をするママさんたちやおばちゃまたちの『井戸端会議』に参加をしてしまう妙な癖をも持ち合わせていました。
井戸端会議&犬

やっぱりこれも「3回参加」すれば満足なのですが、いつものママさんグループの中にこれまで聞いたことのない話し声がすると「何奴?!!」とばかりに駆け寄り → 観察 → じっくり見つめて → 井戸端会議に参加しているふりをして新参者(笑)が怪しくないかどうかを見極める。

誰がどう見てもあんたがいちばん怪しいよ…と人見知りの飼い主は申し訳なさで赤面・恐縮しているのですが、FBIポン太郎の活躍により、近所に話せる知り合いが激増した。

「可愛いね!」「あら、ポンちゃんいらっしゃい」と気軽に話しかけてくださったママさんたちやおばさまたちの懐の深さには頭が下がる思いです。ありがたい

ノルディックウォーキング

ある時には杖をついてリハビリ歩行をしておられるおじいさまを、ある時にはポールウォーキングやノルディックウォーキングでリハビリ歩行されているおじいちゃまを、じっくり見つめて → 「どうした~? 珍しいかい?」などと話しかけられると駆け寄り → 再びじっくり見つめて → 一緒に歩く。

飼い主である私は「すみません、すみません」と恐縮しきりなのですが、おじいさまやポンちゃん自身はなんだか『男同士分かりあってるもんね』といった表情を浮かべている。

保護犬 里親 名づけ

「あらゆる架け橋になってほしい」という思いを込めて名付けたPONTE。このコの一風変わった2つの癖はその後の私の人生を大きく変えることになるのですが、この頃の私はまだそれを知らない――。


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