散歩をいやがる子犬 保護犬 里子犬 (2)





子犬が歩きたがらない道


ポンちゃんの元の飼い主さんはご自宅の隣りにドッグランを建設され、飼われているたくさんのわんちゃんを1日に2度ほどそこに放しておられたそう。だからポンちゃんは路上での散歩をほぼ未経験のままうちのコになった。




自由に走り回れていた自宅横ドッグランとは違って、路上での散歩はハーネス・リードが当たり前の人間社会。はじめはそれすらも嫌がって唸り声をあげていたけれど、そんなことでいちいち怯む(新)飼い主ではないと早々に気づいたらしく、ハーネスリードの装着は比較的楽だった。

この街に暮らす様々な人からもらう声援と、毎日のお散歩トレーニングの甲斐もあって「すたすたと歩ける場所」が増えてきた。

そう、ポンちゃんのお散歩トレーニングを見ていると、すたすたと歩ける場所と「何度も振り返り、何度も立ち止まり、進むのにやたらと時間のかかる場所」の2つがある――ということが分かった。

この違いを分かってやりたい。きっとそこには理由があるはず――。


愛犬たちのお散歩ルート3


暮らしているマンションの外階段を下り、駐車場を抜けるとスタート地点の選択肢は3つある。

A.保育園の分園がある静かで細い道。
B.整形外科や歯科医院、美容室が並ぶ、広い道。
C.向かい合って建つ2棟のマンションの谷間の通り。

  • [A]は15時半を過ぎた頃から18時くらいまでは、お迎えのママたちや園児たちで賑やかになる。
  • [B]はそれぞれの駐車場が裏の通りにあるため、人通りこそあれど車通りは少なく、道幅が広いので安心して散歩をさせやすい。
  • [C]は谷間のとおり、暗くてひんやりとしている。向かい合う片方のマンションの駐車場になっていることもあり、日中と夜間は人通りも車の往来もほとんどなく、お散歩のトレーニングにはもってこい。


ご近所さんのふとした一言


今から3か月前、4月の良く晴れた日のことだった。ご近所に住んでいるトイプードルの男の子の飼い主さんと久しぶりに出くわした。

「ポンちゃん、ずいぶん散歩が上達したねー」
「ありがとうございます。でも他の道ならもっと早く歩くんですよー」
「そうなの? じゃポンちゃんには見えてるのかもしれないね!」
「なにがですか?」
「だってこの道…トトちゃんがリハビリのために歩いてた道でしょう? ちょうどそこの歯科医院まで。リハビリしてるトトちゃんとことぶきさんをよく見かけたし」


亡き愛犬は鳥の姿を借りて見守っている?!

保護犬 先住犬 散歩

あれは昨年の11月。ぴーちゃんの散歩にポンちゃんを同伴させた日のこと。保育園の分園がある静かで細い道を抜けてぐるりと一周、いつものペースで歩くぴーちゃんとは散歩を、スリングに包んだポンちゃんとは「スリン歩」を楽しんでいた。

お天気もいいし肩も痛いし(?)風もあたたかいし、とポンちゃんをアスファルトへ下ろす。歩きたいぴーちゃんと、動かないポンちゃんと「どうしたものか」と悩む飼い主ことぶきちゃん。

大きな大きな白い鳥がわたしたちの2m先に降り立った。

 ――1人と2匹の背後から、歓声に近い声があがった。背後の声は男の子たちと恐らく彼らのおじいさま。お孫さんたちは単純に大きな白い鳥が飛んできたことに驚き、おじいさまは長く住むこの街でこんなにも大きな「ダイサギ」が近くを飛ぶのを初めてみたと興奮気味に話しておられた。

ダイサギは歯科医院の入り口付近に足をつき、じっとわたしたちを見ていた。万が一のことがあってはと、ぴーとポンを胸にしっかりと抱きしめる。2匹もダイサギも威嚇するでもなく震えるでもなく、ただじっとお互いを見つめていた。

しばらくするとダイサギはわたしたちに見せつけるようにゆっくりと低い位置から澄んだ空に駆け上がると、再び同じ位置に舞い降りた。背後ではさっきより大きな歓声があがった。


亡き愛犬はときどき「見にきている」のかもしれない


「トトちゃん…?」

どうしてそんなことを思ってしまったのかは分からない。けれどふと、トトちゃんがダイサギの姿を借りて「お散歩が下手っぴなポンちゃん」を見に来てくれたような気がした。※SNSでは笑われたくなくて「ご先祖様かな?」なんて書いた

「お散歩の練習、がんばるのよ」
「お散歩はとってもたのしいのよ」

なんて言ったかどうだかさえ不明だけれど、こんな不思議なことが「ときどき」ある方が人生はすこしだけ楽しいかもしれないと思った。
亡き愛犬 不思議なできごと

後日もう1度、この日のダイサギほど大きくはないけれど似たような白い鳥が柵の上にとまってポンちゃんとわたしを見ていたことがある。「お散歩うまくなったじゃん」と思っていたのかどうか、わたしには知る由もない。

ただ、ダイサギが現れた日を境にポンちゃんが歩く(相変わらず停まりもする)ようになったのは本当のはなし。本当にあったちょっぴり不思議なおはなし。

――話をぐっと冒頭に戻す。
亡き愛犬 不思議なできごと②
 
人通りこそあれど車通りは少なく、道幅が広いので安心して散歩をさせやすい[B]の道。

 自宅マンションを出てから歯科医院までの5分ほどの短い道は、生前のトトちゃんがヘルニアで麻痺した後ろ足のリハビリに歩いた道。そこはポンちゃんが何度も振り返り何度も立ち止まる道。きっと偶然なんだろうけど――。





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